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  • 執筆者の写真hiro

元ヤンアイドル禁煙中!?

芸能プロダクション『Clover House』


ここで彗星のごとくデビューしたアイドルユニット『Peche』


表舞台のキラキラした世界とは裏腹に彼女たちには厳しい事務所での生活があった。


問題児だらけのメンバーが受けるお尻ペンペンという本来子供が受けるべき罰。








>Clover House事務所の会議室




 朝日紗羅。

 アイドルユニット『Peche』のラップ担当で年齢は21歳。初見のイメージは「怖そう」「言葉遣いが悪い」等々。

 そのイメージは概ねあっていて、それは彼女が元ヤンという少し異色のアイドルだからだろう。しかしながら、それらを払拭して余りあるほどの魅力が紗羅にはあり、何よりも姉御肌で仲間想い。メンバーの悩み相談には一番親身になって乗っている。


そんな彼女の欠点と言えるものはと言うと…敬語が苦手なこと、そしてタバコをやめれないことだ。








「紗羅、今すぐに禁煙しろとまでは言いません。だけど、アイドル活動をするのであれば自宅以外で吸うのはやめなさい。これは事務所からの命令です、分かりましたね?」


「そ、そんな…」


 事務所の会議室でマネージャー兼『Peche』の教育係である出雲美琴が有無を言わせない口調で紗羅に言い渡した。 


「ちょっと待てよ、美琴さん!私はもう21なんだぞ?立派な大人だ!芸能界の中でも、女でタバコ吸っている人はまだいるじゃねぇか!それなのになんで私だけが…!」


 今までも注意は何度か受けてきていたが、こうやって事務所として命令されるのは初めてのこと。命令されることが何よりも嫌いな紗羅は、椅子から立ち上がり美琴に抗議した。 



「アイドルなら自重しなさいと言っているんです。禁煙の風潮が高まって他の人は電子タバコに変えたり、禁煙したりしている中、一日一箱も二箱も吸うアイドルがどこにいますか!あと敬語使いなさい!!」


「うぅ…」


 事務所に所属したころより公私ともに全てに置いて甲斐甲斐しいほどにお世話になっている姉のようなマネージャーの美琴。喧嘩上等の元ヤンアイドル紗羅とはいえ、その雷鳴のような一喝には思わず身を竦めた。


「…『Peche』に某企業のCMの話があります。貴女たちにとっては大きなステップとなりますがアイドルとして綺麗なイメージが必要とされるCMだけに、今『Peche』の朝日紗羅はヘビースモーカーという風聞は非常にまずいのよ?」


まったくの正論だという事も、いつも心配をしてくれている事も頭では良く分かってはいた。だが、一日に2箱もタバコを吸う彼女にとって仕事の合間に吸う煙草はストレス発散とリラックスを兼ねている。それをつまり家にいる間だけにしろとは殺生な話だと思った。


「くっ…ずりぃぞ、そんな言い方」


 親しい人間にしか出ない弱々しい口調で、少し拗ねたように上目遣いで美琴を睨む。


「ずるくありません。本来なら健康も考えて今すぐにでも止めなさいと言いたいところです。でも違法ではないですし、いきなりは可哀想ですから。公私ともに考えて減らしなさい。いいですね?後、敬語つかいなさい」


「チッ、分かっt……はいわかりましたマネージャーぁっ…」


 丁寧ながらも反論を許さない命令を含んだ確認だった。こう言われては紗羅は頷くしかない。僅かな反抗の意味を込めて舌打ちしてはみたものの、美琴にぎろりと睨まれて慌てて素直に返事を返した。

 教育係としてメンバー全員を厳しく躾けている美琴は、約束を破る事を絶対に許さない。もし破ればどうなるか紗羅は文字通り痛いほど身に沁みて分かっていた。


「はぁ…まぁいいでしょう。紗羅、これは大事な事です。もし約束を破ったら嫌というほどお尻ペンペンしますからね」


「ちょっ!いちいちお尻とか言わなくていいんだよ!恥ずかしいだろ!?」





 事務所の会議室に二人っきりだったが、誰かに聞かれはしないかと紗羅の頬が紅潮し身体が熱くなった。二十歳を過ぎてまで膝の上に乗せられてお尻を叩かれていることは、自分が悪いことをしたお仕置きとはいえ恥ずかしすぎる現実だった。


「約束を守ればお尻ぺんぺんなんてされないんですよ。あなたは態度は悪いですけど、性根は真面目な方ですからね。守る気があればちゃんとできるはずです」


「うっ…もう!わかった、わかりました!ちゃんと減らします!」


 吸う場所を考えればいいんじゃないかとテレビ局やスタジオの死角を思い出していた紗羅にしっかりと釘を刺す美琴。こうやって信頼を示されてしまえば紗羅は弱い。若干やけくそ気味ではあったが美琴に全面降伏した。













 結論から言うと紗羅が我慢できたのはわずかに半日だった。ヘビースモーカーなら分かることだが、タバコというのはいきなりは減らせない。

 ましてや順調に仕事の増えている今、一日の半分以上を人目に晒している事になる。ちょっとした待ち時間でさえ一人にはなれない。今までならメンバーに文句を言われながらも、控室や撮影現場の隅でファブリーズ片手にスタッフに見られようが気にせずにタバコを吸っていた。だが今はそれすらも許されない。


「ああ、もう!どこに行っても人がいるじゃねぇか…」


 美琴がちょっとした打ち合わせで傍を離れた隙に、メンバーにはちょっとトイレと断って隠し持っていた煙草と携帯用ファブリーズを握りしめてテレビ局内を歩き回る紗羅。小さな喫煙所には当然人がいた。非常階段も疲れ果てたADが座り込んでいる。地下駐車場もテレビ局だけに数人の警備員がいる。人がいない場所というのは意外と少ないものだった。


「ああ、ちくしょうイライラしてきた。早くしないと美琴さんの打合せ終わっちまうし、本番始まっちまうし。……仕方ねえ、中坊みたいで嫌だったけどあそこしかないか」


 それは喫煙者の最後の砦。未成年喫煙者御用達、トイレである。


 できるだけ人の少ないフロアを選び、女子トイレの個室の入る。都合のいいことに四つある個室は一番手前を除いて全て空いていた。紗羅は一番奥を選択し、素早く入るともどかし気にポケットに手を突っ込むと煙草を取り出して火をつけた。


「はぁー、やっと一服できる」


 ゆっくりと便座に腰かけて紫煙を吐き出す。服に煙草の匂いがつかないように口を付けた後はできるだけ体から離した上、上部の煙探知機に掛からぬように煙は下に吐き出す念のいり様。


「ふぅ、あー、落ち着くわー。ったく美琴さんもタバコくらいでいちいち煩いんだよなぁ」


 リラックスして思わず悪態をつく。たった半日だったがまったく煙草に触れない環境のせいで気が緩んだのか、意外にも大きな声が出てしまった。

 その数秒後、閉まっていた個室で水が流れ人が出てきた気配がした。一番手前の人物が用を足し出てきたのだろう。紗羅は無意味ながらも何となく息を潜めて、出来るだけ音を出さないように様子を窺った。

 しかしその出てきた人物は洗面台で水を使うと、出口へとは向かわず何故か奥へと向かってくる。コツコツとなるヒールの音は心なしか怒りに満ちている気がした。


「……?」


 コンコン。


 紗羅の個室がノックされた。何だろうか。トイレの中での煙草への文句だろうか。紗羅はとりあえず息を殺してノックを仕返した。すると再びドアがノックされる。


コンコンコン。


「はぁ?入ってますけど?」


 だが返事をしたのがまずかった。相手は自分の声に確信を持ったのか、恐ろしく低い声で対応してきた。


「やっぱり紗羅なのね?さっきの声とたばこの匂い。まさかとは思ったけど…貴女っ!」


「え、ええ!?」


 紗羅は慌てて携帯灰皿を取り出し煙草をもみ消す。香水と匂い消しを総動員して匂いを誤魔化しながら何とか声を絞り出す。


「あ、ああ。マ、マネージャー?どうした?トイレ入ってただけ…です…よぉ?先に行っておいてくれよ…直ぐ追いかけるから…です…」


 しどろもどろになりながらも何でもない風を装う。どう考えても怪しい敬語が混ざり、時はすでに遅かったようである。


「誤魔化しても無駄よ。私が入っていた間はしなかったタバコの匂いが貴女が入ってきた途端にしてきたんだから。まぁ、今叱ってしまうと仕事に影響が出ちゃうからね。事務所に帰ってから…ゆっくりと!お話しましょうね!」


 美琴は早口で凄まじい怒りを混ぜながらそれだけ告げると、再びカツカツとヒールを怒りで鳴らし女子トイレを出ていった。


「嘘だろ…サイアク…尻叩き決定かよ…」


 紗羅はドッドッドというアイドリングのような鼓動の高鳴りと、胃を掴まれたような緊張感が襲う中でそれだけ呟いた。









>21時 テレビ収録後 再び事務所内


 応接スペースの絨毯の上で正座している紗羅は、絨毯の上でも正座って痛いんだなと逃避するようにぼんやりと頭の隅で思った。目の前でソファで足を組んでこちらを見つめながら沈黙している、美琴の視線から逃れるように俯く。何度かこの空気に負けて言い訳しようかと思ったが、それは事態を悪化させる事を紗羅は重々承知していた。


「悪かったよ…もうしない…」


 結局叱られる子に許される言葉は謝罪の言葉のみだった。謝罪にしては横柄であったが紗羅にしてはかなり素直に謝ったほうだった。それ以外の言葉はこれから襲うであろう辛い痛みの数を増加させるだけだからだ。


「まさか、半日でアウトとはね。約束通りきつーくお尻を叩くから。膝に来なさい」





 そう言われて素直にお仕置きの場に乗れるなら苦労はしない。しかも美琴のお尻叩きは飛び上がるほどに痛い。今まで喧嘩で血を流したことは何回もある紗羅だったが、美琴のお尻ペンペンだけは足が震えるほどに恐れた。


「ふーん、百叩きがいいのね?」


「ま、待って!の、乗る。膝に乗るから…百叩きは…許して…よ」


 お尻百叩きは最大の罰だった。ただでさえどれだけ泣いても暴れても手加減なしで行われる厳しいお仕置きなのに、百回なんてとても耐えられるものではなかった。


「うぅ…」


 おずおずと美琴の柔らかでいい匂いのする膝の上に身体を横たえる。細いが程よい肉付きのそこは膝枕をしてもらうには最高の場所。メンバー全員がお仕置きの後はそこで甘やかして貰ったことがある。だがその場所は今は辛いお仕置きを受ける場所。


「今日という今日は厳しくお仕置きしてあげるから」


 紗羅の腰を掴んで位置を調整してからしっかりと固定すると、慣れた調子で紅いチェックのスカートを腰まで捲り上げる。それだけで紗羅はびくっと身体を震わせるが、美琴はそのままその下のスポーティな黒いショーツを強引に太股まで引き降ろし、丸くむっちりとした成熟したお尻を剥き出しにした。


「あぅ…」


 これまで幾度かお仕置きとしてお尻を叩かれていたが、こうやってお尻を出される瞬間は恥ずかしさと恐怖で思わず身を竦めてしまう。気の強い紗羅だが恥ずかしさには弱い。しかも子供のように叱られてお仕置きとしてお尻を叩かれることに慣れることはない。


「さぁ、いくわよ」


 美琴はペシぺシと始まりの合図のように平手で紗羅のお尻を叩く。今から剥き出しのお尻をぶたれてしまう。成人した女性だというのに子供のように膝の上で剥き出しのお尻を叩かれてしまうのだ。


「なぁ、マジで悪かったって…もうさ、約束破らないからっ…絶対、本当…いっ…たぁ…!」


 バチィンッ!


 紗羅の引き締まった丸いお尻に平手が振り下ろされた。まったく手加減のない渾身の一打に思わず呻き声を上げる。


「約束を破らないのは当たり前の話よ。これはしてしまった事へのお仕置きなのよ?」


 パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!


「あっ、んっ…、うっ…!痛っ…!ちょ、ちょっとそれ、いてえよっ!」


「お尻を叩いてるんだから痛くて当たり前でしょ。とりあえず煙草を持つたびにお尻の痛みを思い出すようにして上げるわね」


 パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!


「いったぁっ…!うぅっ!は、恥ずかしいっての…あっ…!いぃっ…つ!」


 もう二十歳を超えているのにこうやってお尻を無理やり突き出されてお仕置きをされる。声を出したくもないのに、物凄い力でお尻を叩かれると思わず声を上げてしまう。その全てが恥ずかしくて、紗羅の目には反抗心とは裏腹に涙が溜まり始めていた。


 バチンッ!バチンッ!バチンッ!バチンッ!バチンッ!


「もうわかったからぁ…うぅっ…わか、わかりまし…たってばぁ!…ごめんっ!ごめん、なさい…!」




 紗羅は普段使わない敬語を必死に頭の中で組み立てようとするがどうにも上手くいかない。それでもどうにかそれを口に出さないことには美琴に怒りは収まらないだろう。日常では感じることのできない、お尻の鋭い痛み。それが徐々に紗羅を混乱させて心を剥き出しにさせていく。


「何がごめんなさいなの?ほら、言ってみなさい!」


 紗羅の成熟したお尻はあっという間に真っ赤腫れ上がった。厳しいお尻叩きに我慢できずに子供のようにジタバタと暴れる紗羅。気が強く他人に弱さを見せたくないと思ってはいても、限界まであと一歩といったところだろう。

 そこへ美琴のとどめを刺す一打が振り下ろす。


「……だからぁ、ごめん…もうしな…しません……んだよ、そんなに怒んなくても…」


 バチィーンッ!


「ひぃっ!?」


「どうしていう事が聞けないの!?私があなたの不利になるような事を言ったことがある!?健康面についても心配して言っているのに貴女って子は…!ホントに悪い子ね!」


 バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!


「ちょ、まって…!いたぁっ!わか、わかったっ!わかりましたぁっ!もう約束破らないからぁっ!いぃーっ!」


 真っ赤に腫れ上がったお尻に、美琴は腕を大きく振りかぶって一打一打叩きつけるような平手を落とす。しかも、同じと場所に集中的に与えられるその痛みに、流石に強情な紗羅も子供のように泣き叫びながら謝らざるを得ない。

 一打お尻をぶたれる毎に痛みに足やお尻がびくりと動いてしまう。お尻に与えられる焼けつくような痛みに、必死に手を握り締め我慢しようとするが泣き叫んでしまっている。


 バチィーンッ!バチィーンッ!バチィーンッ!バチィーンッ!


「わーんっ!ごめんなさいぃっ!いたぁいっ!ごめんなさいっ!やだやだいたいぃっ!」


 もはや紗羅の思考は痛みだけに支配されている。恥も外聞もなく両足を振り上げ、髪を振り乱しお尻を逃そうと暴れる。喧嘩上等の元不良の矜持もアイドル朝日紗羅としてのプライドも、こうしてキツイお仕置きの前では空しく砕け散ってしまう。

 無論、相手が気に入らない相手なら紗羅はどんな嫌がらせやいじめだろうと屈することはない。相手が『Peche』全員が姉のように慕う美琴からのお仕置きだからこそだ。それもこれも愛情と信頼、それに苦痛と羞恥が混ざった結果だと言える。


 バチィーンッ!バチィーンッ!バチィーンッ!バチィーンッ!


「こら!紗羅!どうなの、反省したの!?これからは約束を破らない!?」


「はんせいしたぁっ!あぅっ!しましたから!もう約束破りません!」


 応接スペース内どころか事務所中に紗羅の鳴き声とお尻を叩く音が響き分かっているのだが、それを気にする余裕は紗羅にはない。アイドルがお尻を丸出しにされてお尻ペンペンのお仕置きをされているなんて恥ずかしくてたまらない。とはいえ、四人の誰かが週に一度はお尻を叩かれているのだから彼女達も懲りないというか、まだまだ身体だけが大きな躾の必要な子供だということだろうか。









「ぐすっ…うぅ…ひっく…いてぇよ美琴さん…やりすぎだし…」


 まだらに平手の痕の付いた腫れ上がった丸い大きなお尻をさらして立たされる紗羅。頭の上には煙草の箱が置かれていてそれを両手で押さえている。反省の時間、コーナータイムだ。


「私がいいという前にその箱を落としたら、最初からやり直しよ。いいわね?」


「う………はぃ」


 ヒリヒリと痛むお尻を摩りながら座り込みたい衝動に駆られるが、そうすれば箱は落ちてしまう。恐らく本当に初めからお尻叩きをやり直されるだろう。お尻にダメージが残っては仕事に差し支えるので道具で叩かれるようなことはないが、もしかしたらスケジュールの調整をしてまで道具でお仕置きをされることがあるかもしれない。


「はぁ、本当に困った子ね。控えろと言っただけなのにもうお仕置きなんて。まぁ、これからたっぷりとお尻で禁煙に向けて頑張ればいいわ」


 口で厳しいことを言いながらも、取り出したハンカチで紗羅の涙を拭ってやった。たおやかな指先が紗羅の頬を撫でるように優しくすべる。まるで小さな子供のするようにぷにぷにと手入れのされた爪に突かれた。紗羅はお仕置きに痛みや恥ずかしさも忘れて、幼子のように扱われることにむず痒い嬉しさを感じた。


「突かないでよ、美琴さん…子供じゃないっての…」


「こーら、敬語使いなさい」

 

 美琴はぐるりと回り込むと、紗羅の真っ赤に晴れ上がったお尻に傷がないのを確認しながら微笑ましそうに苦笑した。


「やれやれ、本当に手のかかる子達だわ。これからもっとしっかりと躾けて上げるからね?」


「鬼マネージャー……」


 悪態をつきながらもこの事務所を止めようとは思わない。厳しいお仕置きをされても美琴や社長のことが大好きだから。それに、いつか輝くようなステージでトップになってみたい。自分たち四人ならそれが出来る気がする。紗羅はその為になら禁煙も悪くない、そう思いながら腫れたお尻が疼くのを眉を顰めて我慢した。







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